副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

「復讐はきっと何も生み出さないと思います。復讐を果たしたとしても、きっとその先には、新たな敵意しか生まれない…。永遠に繰り返さっるだけだと思います。だから、どこかで終わらせなければならない。きっと、私の記憶が曖昧になったのは。復讐が永遠に続かないようにするために、神様がそうさせたのだと思います」

「神様ねぇ…。神様が本当にいたなら…未菜は死なずに済んだはずだけどなぁ…」

 消え入りそうな声で郷は小さく呟いた。

 涼花はそっと頭を下げ、その場を去って行った。

 去り行く涼花を、郷はそっと見ていた。

「確かに5年の間、僕は風香さんを見ていたよ。…愛しくてたまらなかった…。でも…それ以上に…風香さんを強い愛で見ていたのは…副社長なのかもしれないな…。あんなに結婚してほしいって、必死だったんだ…僕が勝てるわけないか…」

 夜空を見上げて郷は痛い笑みを浮かべていた…。
 だが気持ちはどこか晴れ晴れしていて。
 敵討ちが出来なかった悔しさはあるが、これでよかったと納得している自分がいる事に気づいていた。





 その日の深夜近く。

 郷は美也が自白した未菜殺害の証拠を警察に届けた。
 そして重乃と有香を殺害したのも、美也である証言をした。

 美也から「重乃と有香が邪魔なの。あの2人、私が水守さんを殺したって脅してきているの。そして5年前、風香さんを殺そうとしたって。全部私に罪をかぶせて終わらせようとしているのよ。何とかしてくれない? 」

 とメールをもらっていた。
 そして最後に美也から
「入院しているなら、呼吸器で求めれば死ぬわよね? 私の服用している薬でも点滴に混ぜたら、幻覚みて自殺してくれるわよ」

 と送られてきていた。

 そのメールを見せると、警察は有力証拠として美也を逮捕する為動き出した。


 あとは警察に任せよう。

 そう決めた郷。




 
 それからは静かは日々が過ぎて行った。



 そして約束の週末になり。

 秀臣と宇宙が会う約束の日になった。


 レジデンスに秀臣を招いて、話をする事にした宇宙。

 涼花は傍で黙って聞いているだけにした。



 

 涼花がお茶を入れてくれて。

 秀臣と宇宙はゆっくり話し始めた。

 今日の秀臣はラフな格好で、いつもより若々しく見え、穏やかな表情をしている。
 宇宙も今日は休日でラフな格好のまま話している。
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