副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
3人の女達の共通点
「いやね、僕は特に君の事を敵視しているわけじゃないよ」
ニコっと笑って秀臣が言った。
「随分と誤解されてしまっているようだけど。涼花を助けたのは、僕の弟の忠臣。金奈総合病院で副院長をやっててね。忠臣と宗田ホールディングの営業部にいる篠山郷さんは、昔からの親友で。郷さんは、ずっと涼花を気に止めていたようで。5年前のあの日、偶然にも重乃さんと有香さんと美也さんが、涼花を陥れる話をしているのを聞いてしまったようで。マークしていたようでね。残業して帰る途中で、怪しい雰囲気を見て嫌な予感がしたって話していたよ。それで、家に戻っていない涼花の事を聞いてもしかしてって、そう思いあの階段を見に行ったら倒れている涼花を発見したんだ。怪我をしているだろうと想定して、忠臣を連れて行ったそうだよ」
「…そんな事があったのですね。…傍にいながら、気づけなかった自分が悔しいです…」
「そんなに自分を責めることはないよ。発見された時、涼花は殆ど衰弱して呼吸も止まりそうだったんだ。命を取り留めても何も分からず、ただ、ただ怯えていたから。私と忠臣が判断して、君には連絡しなかったんだ。きっと2人が会っても混乱するだろうし、少し距離を置いて落ち着かせた方がいいと思ったんだ。だがその間に、離婚届が送られてきてしまった事から。君が涼花との離婚を決めたと思ってしまったんだ。何も分からない涼花も、それがいいと言い出してね。君に本人限定で離婚用紙を送り、その後涼花の改名をしたんだ。このままでは、また命を狙われると想定してね」
ズキン…。
胸に重く痛い感覚が伝わってきて、宇宙はそっと目を閉じた。