副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

「どうした? 」

 何でもないと首を振った涼花だが。
 そのまま洗面所へ走って行った。

 そんな涼花の姿を見て、宇宙は…。

「もしかして…」

 ちょっと嬉しそうに目を開いて、涼花の後を追った。



 
 洗面所にきた涼花は、気分が悪そうに胃の辺りを押さえていた。

 
「大丈夫か? 」

 声をかけてきた宇宙に、涼花は「大丈夫」と頷いた。


「ねぇ、病院行こう」
「え? 」

「ちゃんと診てもらわないと」
「いえ、大丈夫です。もう、治まりましたから」

「そうじゃなくて。…」

 宇宙はそっと、涼花を抱きしめた。

「そうじゃなくて。来てくれたんじゃないのか? 」
「来てくれた? 」

「俺達の子供が」
「そ、そんな…まさか…」

 そっと体を離して、宇宙は涼花のお腹に触れてみた。

「なんか感じるよ、すごいエネルギー」

 まさか…そんな事…。
 だって私…。


「それはないと思います」

 ちょっと悲しげな目をして涼花が言った。

「なんで? 決めつける事ないだろう? 」
「だって…私は、子供が産めませんから」

「え? どうゆう事なんだ? 」
「…高校生の時に病院で言われました。…ホルモンのバランスが悪いから、月経も不順で。薬を使わないと、月経が来ないときが多くて。…医師からは、子供を産む事は無理だろうって…」

「高校生の時って、随分前じゃん」
「…だって…」

「いいから、とにかく病院に行こう。それで違うなら、もう一度調べてもらえばいい」

 困った目をしている涼花だったが…。


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