副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

 宇宙は涼花を連れてリビングに戻ってきた。

「すみませんでした、急に席を外してしまって」

「いや、構わないよ。話は、だいたい終わったから。結果的に、君は涼花と離婚していなければ5年前と変わらないって事だね」

「はい。なので、お許しいただけますか? 俺達の事」

 秀臣はニコっと笑った。

「もちろん大歓迎だよ。私の力が必要なら、いつもで言ってくれれば力を貸すよ」

「有難うございます。まだお聞きしたい事もあるのですが、ちょっと急に病院に行かなくてはならなくなりましたので。また後日、お伺いさせてもらえますか? 」

 病院と聞いて秀臣はキョンとなったが、ずぐに察したようだ。

「またいつでも連絡してくれていいよ。病院に行くなら、送ってゆくよ。その方が早いからね」





 その後。

 宇宙と涼花は秀臣に送ってもらい。金奈総合病院にやって来た。

 
 受付を済ませしばらく待っていた宇宙と涼花。

 1時間ほど待つと診察室へ入って行った涼花。

 宇宙は待合室で待っている事にした。



 
 かれこれ待っている事15分ほどで涼花が戻ってきた。

 ちょっと重たそうな顔をして俯いている涼花…。


「どうしたんだ? そんな顔して」

 そっと声をかけた宇宙。
 涼花はそっとお腹に手をあてた…。

「…赤ちゃん…いました…」
「本当か? 」

「はい。でも…一人じゃないんです。二人いるんです」
「え? 双子なのか? 」

「はい…」

「おめでとう! 」

 ギュッと涼花を抱きしめた宇宙は、ズルっと鼻をすすった。

「…良かったな。…本当に…」
「いいのですか? 私なんかが産んでも…」

「またそんな事言うなよ。俺とあんたを選んできてくれたんじゃないか」
「だって私…忘れてしまうから…。子供の事だって分からなくなるかもしれないし…」

「忘れたら、思い出せばいい。忘れる事を、恐れることはない。俺が傍にいるから」
「…許してくれますか? 私の事」

「許すってなにを? 」
 
 お腹に手をあてたまま、涼花はギュッと口元を引き締めた。
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