副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
まだ入社して間もない時だった。
宇宙は副社長になたばかりであたふたしていて、当時総務にいた篠山未菜という女性に世話になる事が多かった。
書類を持って来てくれた未菜が、丁寧に詳しく教えてくれることも多く、そのお礼にランチに誘ってご馳走していた。
未菜は可愛いタイプで、男性社員からとてもモテていた。
魅力的なタイプで、誰とでも仲良くなれる未菜は他の部署の手伝いもしているくらいだった。
そんな未菜がある日突然亡くなったと聞かされ。
階段からの転落死と言われショックを受けていた宇宙。
それと入れ替わり位に、郷が入社してきた。
郷は特に妹の事は口にすることなくまじめに仕事をしていて周りともあまり関わろうとしなかった。
メガネをかけて生真面目で無口なイメージが強く。
ここ最近は美也と親しくしていると社内でも噂になっている。
未菜とは真逆のタイプで、つかみどころがないのが正直なところである。
「篠山さんと忠臣叔父さんは、学生時代からの親友だと話していました。妹さんの事もあり、ずっとマークしていた人達がいたそうです」
「マークしていた人達? 」
ギュッと拳を握りしめた涼花の手が、ちょっと震えだした。
「私を階段から突き落としたのは、重乃さんと有香さんと美也さん3人です。理由は、醜い私が貴方と結婚した事です。…そして…篠山さんの妹である水未菜さんを階段から突き落として殺したのは、美也さんです」
「…そんな繋がりがあったのか? 」
「はい。重乃さんと有香さんと美也さんは、随分昔からつるんでいたようです。3人の中で、有香さんは結婚をして幸せな家庭を築いたように見えていましたが。旦那さんに浮気をされ、結局離婚して子供を引き取っても、殆ど元旦那さんの実家に盗られていて世の中を恨んでいるようでした。重乃さんは、どれだけ婚活しても決まらなくて。お金持ちばかりを狙っている事から、あなたの事を狙っていたようです。そして、美也さんは…家庭環境から現実逃避をするようになったようで、善悪の区別もつかなくなり。自分に逆らう人は、みんな消してきた人です。…私の父と母は…美也さんの担当医でもありました。…」
「担当医って事は、あんたの両親の事良く知っているって事だな? 」
「はい…。内の病院は心療内科だったので、精神面が病んでいる人が多く来ていました。…美也さんは患者の一人で、初めは立ち直りたく通院しているようでした。…でもある日…」