副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
今から7年前。
美也は未菜を殺したことで気分が躁になり、気が狂ったようにハイテンションになっていた。
そんな気分の中診察にやって来た美也。
北条メンタルクリニック。
風紀はメガネをかけ、顔の雰囲気は涼花に似ている。
厳しそうな顔はしているが、目がとても優しい。
年齢よりも随分若く見える風紀は、他の患者にもとても好感度が高かった。
白衣を着てスラっとしている風紀を、美也はじっと見つめていた。
「先生。私、やっと心から愛せる人を見つけました」
ん? と、ちょっと驚いた目をして風紀は美也を見た。
すると…。
美也はニコっと笑って、ブラウスのボタンを外し始めた。
「ちょっと…何をするんだ? 」
バサッとブラウスを脱いだ美也は、そのまま風紀に迫って行った。
「先生。私が心から愛せる人は、先生です」
ギュッと風紀に抱き着いて、無理やりキスをしようと迫って来る美也。
「ちょっと待って下さい」
突き放す風紀を押さえて、美也は無理やりキスを迫ってゆく…。
風紀は仕方なく緊急ボタンを押した。
ボタンの音に、他の看護師が数名駆けつけてきて、美也を押さえた。
「何するのよ! 離してよ! 先生と私の仲をひきさこうとするの? 離して! 」
看護師達に取り押さえられ、美也は診察室から連れ出され、そのまま強制的に金奈総合病院の精神科に搬送され隔離状態にされた。
隔離された美也は「先生から迫ってきて私を襲ってきたの! 」 と自分が被害者のような証言をしたが、診察室には防犯カメラも設置されていて、明らかに美也から風紀に迫ってゆく場面が写されていた。
薬で安定させられた美也だが、躁鬱の鬱の方になってしまい「…愛する人に傷つけられた」と言い出し、風紀を恨むようになっていた。
数ヶ月入院していた美也だが、精神が安定した事から退院して、半年後に宗田ホールディングに戻ってきた。
戻ってきた美也は、ひと際目立つ未菜に目を付けた。
未菜は好感度が高く、男性社員にも受けがよく副社長である宇宙とも親し気だった。
そんな未菜を見て美也の中に湧いてきたのは憎悪だった。
鬱になった自分を認められなくて、誰かに怒りを向け何かを仕向ける事で自分を奮い立出せるしか美也には生きる糧がなかった。
そんな美也と意気投合した、有香と重乃は、未菜殺害計画に手を貸した。
見事に成功して、3人で大喜びしていた。
それからは、美也は、重乃と有香と攣るんで気に入らない女子社員に嫌がらせをして消すことに喜びを感じて生きる糧にしていた。
有香が結婚した時は「どうせすぐに離婚よ。あんなデブを相手にする男どこにいる? 」とバカにしていた。
重乃も同じで「デブ専男もそのうち飽きるわよ」と笑っていた。