副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
2人の愛のカタチ

 震えている涼花の傍に行き、宇宙はそっと抱きしめた。

「もういいよ。分かったから…」

 優しく涼花の頭を撫でて慰めてくれる宇宙。
 そのぬくもりを感じると、自然と穏やかになってゆく涼花…。

「ごめん、そんなに辛い時に傍にいてあげられなくて…」
「いいえ…そんな事…」
「もう離れたりしないから。俺と、これからずっと一緒にいてくれるか? 」
「…はい…」
 素直に答えた涼花が愛しくて、宇宙はそっと涼花の額に額をくっつけた。

「安心して子供産んでいいからな。ここで、一緒に育てる事が夢だったから…有難う、俺と出会ってくれて」
「私こそ…」
 嬉しくて泣きだしてしまった涼花。

 
 曖昧な記憶の中、最近では忘れる事も少なくなり昔の事もハッキリ思い出せる時が多い涼花。
 半ば脅迫のように宇宙からセフレになるように言われて、罪悪感を抱えながら関係を続けていたがまさか実は夫婦のままだったとは夢にも思わなかった。




 それから数日後。
 郷がいつものように出勤してきた。
 オフィスビルへ向かう為、歩道橋の上を歩いていると。
「ん? 」
 郷の目の前に黒いフードをかぶった女性が立ちふさがった。


 口元でニヤッと笑った女性。
 郷はその女性を見てフッと笑った。

「なんだ…。逮捕されたんじゃなかったのか」
 顔を上げたフードの女性は美也だった。
 いつもの化粧もしておらず、黒いフードをかぶって下はヨレヨレのジーンズと吐きならした黒い靴だった。
「私は捕まらないわ。誰も私を捕まえられないもの」
「ふーん。でも、あんたは指名手配になっているよ」
「そんなの怖くないわ」
 美也は郷に歩み寄ってきた。
「小さい頃から、ずっと修羅場を見て来たもの。…父親は酷い暴力ばかりふるって、それに対抗して母親も父親を殴って毎日喧嘩してたし。気に入らない人は、みんな殴って殺せばいいってずっと親から言われてきたの」
 郷の傍に来ると美也はニヤッと笑った。
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