副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

「私の父親は5人も人を殺しているのよ。表向きは、公務員で市役所勤めだったけど。気に入らない同僚を、事故に見せかけて殺しているの。3人は階段から転落して1人は歩道橋から転落して…最後の一人は、歩いている時に頭上からパソコンが落ちてきて、頭に当たって死んだのよ。それでも、父は何一つ証拠がなくて逮捕されなかったわ」
「ふーん。そんな親の姿を見て育って、それが正しいって思っているわけ? 」
「しょうがないじゃない? それしか知らないんだもの。母親だって、気に入らない人をみんな毒殺しているのよ。私の母親、看護師で両親は医師だったの。だから、毒薬なんてすぐに手に入れられて。初めに殺されたのは、祖母だったわね。毎日毒入りのお茶を飲まされて、ある日突然死んでしまったわ。祖母が死んで母親は、思いきり笑っていたわね。次に殺されたのは、父親だけどね。浮気がバレて、こっそりお茶に睡眠薬入れられて。そのまま運転して、居眠りして事故起こして即死だったわ」

 キラッと光るナイフを取り出し、美也は郷に突き付けた。
「でも、そんな母親を殺したのは私よ。私の母親ね、狂ってたの。好きになった人を、みんな運命の人って思い込んで。その人に関わる女達を、みんな殺してきたの。酷い時なんて、家に火をつけて焼き殺したこともあるのよ。そんな母親がね、私が心から好きって想える人を奪ったのよ。…いい年下ババアが、親子ほど年下の男を寝取ったの。気持ち悪かったわ。…家に帰ったら、2人がベッドでシテるところ見せられて…」

 ニヤッと笑って、美也は郷の頬にナイフをあてた。
「私の母親は、未だに行くへ不明なの。どうしてか判る? 」
「さぁ…僕には判らないな。そんな事」

 ドン! と、郷を歩道橋の策に押し付けて、美也は狂ったように笑いだした。

「あの人ね。冷蔵庫の中なの。しかも顔だけね」
 顔だけと聞いて、郷はゾクっと寒気を感じた。
「体はバラバラに刻んで、燃やしてあげたけど。顔だけは残してあげたの…未だに憎しみは消えないから、いつでも殴れるようにね」
 グイッと、郷を押し付けてナイフを突きつけた美也。
「…あんたの顔も、残してあげる。…わりと好みだし…」
 郷の首にナイフをこすりつけ、美也は勝ち誇ったように笑った。
 と…。
 郷はそのまま美也を抱き上げた。
「な、なに? 」
 驚く美也をニヤッと見て、郷はそのまま美也を歩道橋から突き落とした。

「きゃ~!! 」
 美也の悲鳴は道路を行き交う車の騒音でかき消されてしまった。
 そのまま真っ逆さまに転落した美也は、スピードを上げて走ってきた車に勢いよくぶつかった!

 ドン! と鈍い音が響いて、美也は大きく跳ね飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられた。
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