エチュード〜さよなら、青い鳥〜
すべてを解決する方法
「ごめんね、デート中に呼び出すなんて無粋なことして」
四辻と共に自宅に帰ると、今日は休日返上で仕事をしていた父の広宗がスーツ姿のまま出迎えてくれた。
「平気。お父さんこそ帰ったばっかりなの?」
「うん。もしかしたらまた出なくちゃならないから。悪いね、四辻くん」
「いえ」
初音と四辻はリビングのソファに座る。広宗がその向かいに座る。母の恵も広宗の隣に座った。
口火を切ったのは広宗だ。
「いよいよ宮崎さんがご勇退だ。
四辻くんは、よくやってくれてるけどさ、やっぱり若いし、うちはクセ者も多いから色々大変だろ?」
「…やり甲斐は、あります。ですが、社長のおっしゃる通り、不安材料もあります。
アリオンから来たばかりの、海のものとも山のものともつかない若輩者だと警戒されたり、鼻にもかけてもらえないこともあります」
「アハハ、正直だねぇ。
今の四辻くんの葛藤はよく分かるよ。俺が大学生の時にこの会社を起業した頃を思い出す。
あの頃は人生経験も浅くてね、苦労したよ。
まー、俺には『アリオンの御曹司』っていう、望んでもいない威光があったけどさ。それだけじゃろくな人材は集まらない。
丹下の一族は、『アリオン』の名前と上手く折り合いつけながら、本物を見抜くチカラを持たなくちゃならないんだ」
容易に想像出来る。やや童顔の社長はまるでアイドルと呼ばれる芸能人のように、きらびやかなオーラをまとっている。若い頃はきっと今以上に会社社長というよりは、アリオンの御曹司として遊んでいる雰囲気だったのだろう。