エチュード〜さよなら、青い鳥〜
不穏に甲高く揃った右手の和音。
その最初の音で、その場に居合わせた人々はハッと息を飲む。
左手の音は、下へと降りていく。その一方で右手の高音の力強い和音。
そして、両手で正確で華麗なユニゾンとなり、すぐさま左手は上下にうねるようなアルペジオ。


その序奏だけで、会場の空気を変えた。
話をする人も、食事をする人も、みな、ピアノに耳を傾けずにいられない。

初音の奏でる音の粒は、一音一音、弾けるようにその場に居合わせた人々の間を駆け抜けていく。


決して強さだけじゃない。消えてしまいそうな弱さもある。それが激動の時代を生きる不安や焦燥感をあらわしているようで。
心にうねる複雑な感情を、音楽で表現しようとするショパンのメッセージが聞こえるような演奏だ。










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