エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ジュンの店を出て、銀座の街を二人で歩く。
今夜は銀座から少し離れたところにある、隠れ家的なレストランで夕食だ。
初音は、料理をつつきながら考える。
結婚すると決めた日から、一週間ぶりに会えた。
夜になると冷えるようになっていて、冬はすぐそこまで来ていると感じる。
これから年末に向けて四辻は、より忙しくなるらしい。初音も卒業に向けて色々と忙しくなるから、たぶんなかなか会えなくなる。
だから、会える時間を大切にしたかった。
出来れば四辻との関係を深めたい。この間初めて、しかも初音からキスをした。これから結婚するというのに、スキンシップはあの時の、触れただけのキスだけ。
ーー魅力ないのかなぁ。
四辻が丹下の家へ初音を迎えに来るばかりで、初音は一人暮らしをしている四辻の住むマンションを訪ねたことがない。
ーーどんな暮らしをしているのかも知らず、結婚だなんてよく言ったわ、私。
出来れば、今夜、四辻の部屋に行きたい。
二人きりになれば、何かが起こるかもしれないし…いや、自分から、アクションを起こす。
でも、四辻の部屋に行きたいと、なかなか上手く言えない。自分から言えば積極的だと思われてしまいそうで、嫌だった。