エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「…君って人は…。
男慣れしていそうで、全然なんだよな。誘われれば誰とでも寝るタイプって聞いてたけど、やっぱり違う」

『誘われれば誰とでも寝る』自分のことを確かに周囲がそう思っていることは初音も知っていた。だが、周囲と言っても大学内くらいの範囲での話だ。まさか四辻の耳にまで入っているとは思っていなかった。大慌てで否定する。

「誰に聞いたの、それ!
違うの、ちょっと一緒に出かけたり食事したりした男の子達が、『俺はあのアリオンの丹下と付き合ってる』ってうそぶいて。それがだんだんエスカレートして、しまいには『俺はあのアリオンの丹下と寝た』って。男のプライドってヤツ?
別に害はなかったし、ちょっと哀れにも思えて放っておいたんだけど。そんなもの勝手に言わせておけばいいやって。気にもしなかった。
四辻さんの耳にまで入ってるなんて」

「うん、聞いた時から変だと思ってたけど。
何度もいい雰囲気になってるのに、なかなか先に進まない。本当に男慣れしているなら、今頃とっくに抱いてる。
ピアノをダシにせっかく家に連れてきたのに、窓からの景色やアリオンのエンペラーばかり見て。

初音、俺を見て。嫌なら、今なら帰せる。もし覚悟があるなら、このまま今日は帰さないけど、どうする?」

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