エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーーなんだ。同じだった。

四辻が初音に興味がなかったわけじゃなかった。初音の恋愛偏差値が低すぎて、気づかなかっただけだ。


「プロコフィエフ、止めて。
今はピアノ聴かない。
今は、四辻さんの声だけ聴きたい」

「…涼。もうすぐ初音も『四辻』になるんだ。俺のことは、名前で呼んで」

「名前?なんか、恥ずかしい」

「同級生のことは平気で下の名前で呼んでるじゃないか」

拗ねた様子の四辻。そんなこと、気にしていたなんて、気づかなかった。

つくづく、人の気持ちは難しい。わかっているようで、全然わかっていなかった。
でも、こうやって、一つずつ思いを伝いあっていけばいい。一つずつ歩みよって、一緒に生きていければ、毎日が最高になる。

「そうだったんだ。これからは、遠回しじゃわからないから、してほしいこと、思っていること、ハッキリ教えて?
四辻さんから見て、私、てっきり魅力ないのかなぁって思ってたんだから」

初音は、両腕を四辻の首に回した。そして、そっと四辻の耳元で一言つぶやく。

ーー涼。私、初めてだから。
この指はピアノに触れればどんな音も奏でられるけど、涼に触れたらどうしたらいいかわからない。

四辻は、それを聞いて極上の笑みを浮かべると、初音の手をとり、白く長い指に口付けた。

「教えてあげる。俺が最初から。
だから、今日はこの指、ピアノじゃなくて、俺に触れていて」






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