エチュード〜さよなら、青い鳥〜
幸せな生活
多忙を極めた年末はあっという間に過ぎ去り、新しい年が明けた。
朝、目が覚めると、涼は一人だった。
隣はすでに冷たいが、人が寝ていた形跡がある。
妻は毎朝のルーティンに行ってしまったようだ。
「あ、涼くんおはよう」
涼が寝癖をなでつけながら洗面所にむかうと、初音の母、恵がすでに支度を整えて顔を出した。
「おはようございます、お義母さん。今朝は冷えますね」
「ほんと。あぁ、朝ごはんはテーブルに置いてある。私、今日は早朝会議でもう出るから。
初音のことお願いね」
「わかりました。朝早くから大変ですね。気をつけて」
バタバタと玄関に向かう恵。
そこへ部屋着姿の広宗がリビングから現れた。
「あ、おはよう、涼」
「おはようございます、社長」
「ほら、恵、慌てない。忘れ物ないか?」
慌てふためく恵に、広宗が声をかける。
「大丈夫。ゴメンね、今日は帰りも遅いから。
じゃあ、ヒロ、涼くん、行ってきます」
「いってらっしゃーい。
…さてと。俺はゆっくりコーヒーでも飲もう」