エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「初音、ピザがきたぞー。熱いうちに食えよ」
その時、大輔が初音に声をかけた。去り際を見計らっていた初音は、渡に船とばかりに返事をする。
「あ、食べる!それでは、失礼します」
初音は四辻にペコリと会釈すると、身を翻してテーブルに戻った。
初音のことを知らずに褒めてくれたことが嬉しかった。
アリオンの創業者一族だと知れば、媚びを売って気に入られようとしてくる人を、これまでの人生で嫌というほど知っている。
純粋にピアノの演奏を評価してもらいたいのに、“アリオンの丹下”という名前が、全てを塗り潰してしまう。
彼の感動を素直に喜びたいから、名乗らなかった。
「何?ナンパ?」
四辻と別れて戻ってきた初音に、大輔が言った。
「かもねー。久しぶりに人前で演奏したら釣れた。サラリーマンに興味はないけど」
初音はピザにかじりつきながら、笑った。
四辻涼という名前と、あの感動して嬉しそうな笑顔をセットにして、記憶の奥底にしまいながら。
その時、大輔が初音に声をかけた。去り際を見計らっていた初音は、渡に船とばかりに返事をする。
「あ、食べる!それでは、失礼します」
初音は四辻にペコリと会釈すると、身を翻してテーブルに戻った。
初音のことを知らずに褒めてくれたことが嬉しかった。
アリオンの創業者一族だと知れば、媚びを売って気に入られようとしてくる人を、これまでの人生で嫌というほど知っている。
純粋にピアノの演奏を評価してもらいたいのに、“アリオンの丹下”という名前が、全てを塗り潰してしまう。
彼の感動を素直に喜びたいから、名乗らなかった。
「何?ナンパ?」
四辻と別れて戻ってきた初音に、大輔が言った。
「かもねー。久しぶりに人前で演奏したら釣れた。サラリーマンに興味はないけど」
初音はピザにかじりつきながら、笑った。
四辻涼という名前と、あの感動して嬉しそうな笑顔をセットにして、記憶の奥底にしまいながら。