エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「マジか。すごいなんてもんじゃねぇな」

大輔が腰を抜かしたように、ピアノの椅子に座り込む。
初音は、話がうますぎてどうも腑に落ちない。
渡された書類に目を落としてみるが、英語には自信がある初音でも分かりにくい内容だった。
添付された手書きのドイツ語のメモには、マーシャ・アルジェリーナのサインが見てとれる。だが、本物なのか怪しい。


「杉田先生、今日はこのまま帰ります。この書類の内容をキチンと確認したいので」

「あぁ。そうだな。僕もまだ夢心地だ。ディアナ・クラウゼからの連絡だけでも驚いたのに、マーシャ・アルジェリーナとはなぁ」

杉田は信じているようだが、初音はどうにも信じられない。
英語教師の母に書類を見てもらうために、とりあえず自宅に持ち帰ることにした。




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