エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「ドイツの大学に直接電話して確認してみるのが確実だけど、ドイツ語なんてちんぷんかんぷんだしなぁ。
ここは、アイツに協力してもらおう。桜木にとって語学習得は趣味みたいなもんだし、ドイツ語もいけるだろ」

広宗がポケットからスマホを取り出した。

「あ、クロ?仕事中?
悪いんだけど、桜木に見てほしい書類があるんだよ。初音の留学についてなんだけど。
桜木はドイツ語いける?良かった。じゃ、FAXで送る。そっちの番号教えて」

クロというのは、広宗の高校時代の同級生で親友だ。一条拓人の妻で弁護士の一条いぶきの秘書をしている。
桜木というのは、一条いぶきの旧姓。一条いぶきとも同級生だった広宗は、いまだに彼女を旧姓で呼ぶ。

「桜木、今、一条商事で仕事中だった。ドイツ語も大丈夫。その書類見てくれるって。涼、この番号にFAX送って」

「は、はい」

広宗のメモを手に、涼が書類をFAXで送る。

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