エチュード〜さよなら、青い鳥〜
FAXを送って程なくして、広宗のスマホが鳴った。
「あ、桜木だ。
…もしもし?忙しいのに急で悪いな、桜木」
『丹下くんは、いつも突然じゃない。慣れてるわよ』
広宗が通話をスピーカーにしてくれた。スマホから一条いぶきの声が聞こえる。
『今、書類に記載されていたドイツの音楽大学のディアナ・クラウゼ教授に問い合わせたわ。
期間は1ゼメスター。3月から6月末まで。ただし、初音ちゃんの出来次第では延長もあるって。
クラウゼ教授の大学に在籍して、大学の授業も受けつつ、マーシャ・アルジェリーナのレッスンが受けられるということよ。
すごいじゃない、初音ちゃん!これは行かないという選択肢は無いわ』
興奮気味のいぶきの声に、やっと実感が湧いてくる。実感が湧いた途端、どっと喜びが押し寄せて嬉しすぎて泣きそうにさえなる。
「いぶきおば様、ありがとう!!」
『私を頼ってくれてうれしい。ドイツ語も勉強しておいて良かったわ。
初音ちゃんの代理人として何かあれば遠慮なく、って伝えてあるから。安心して勉強してきてね!』
何とも心強い味方だ。