エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「あぁ、やっぱり敵わない。
マーシャのピアノを聴けば全て許してしまう。
神に与えられた才能よね。中身はただのワガママ婆さんだというのに、ピアノを弾けば、音楽に愛された神が宿ったよう」

クラウゼ教授は深いため息をつきながら、マーシャの演奏に耳を傾けている。


「今、こうしてマーシャのピアノが聴けること、マーシャと出会えた奇跡に感謝します。
私の目指す世界は、ここにある」

神様に少しでも近づきたい。
あの領域に到達できるなら、自分の人生の全てをピアノにかけてもいい。



今の初音には、マーシャのピアノが全て。ピアノしか、見えない。
日本で待っている涼のことを、考えることさえ忘れるほどに、ピアノの世界にのめり込んでいく…












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