エチュード〜さよなら、青い鳥〜
実に半年ぶりの初音の姿は、あまりに衝撃的だった。
忘れかけていた恋情が首をもたげていく。


ーー初音、君に会いたい。
君の一番近くでピアノを聴きたい。俺のためだけに、弾いてほしい。


居ても立っても居られなくなり、涼は立ち上がった。



「四辻さん?どうされました?」

勢いで社長室までやって来た涼に、社長秘書が声をかける。

「あ、いや、社長は?」
「今日は、アリオン本社です。そのまま直帰ですからお戻りになりませんが」
「そう。じゃ、また改めます。失礼しました」

危うく何もかも放って、社長に直談判してドイツに行く所だった。居なかったことが幸いだ。



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