エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「ね、涼。
今日久しぶりに、暑気払いで飲まない?」
「え」
まるで、昔、付き合っていた頃のよう。軽い感じで誘う陽菜に涼は言葉を失う。
「大丈夫、やましい事は何もない。
私、あなたのことはすっかり自分の中でケリをつけたから。そもそも結婚した人には興味ないし。
ただ、ちょっとグチ聞いて欲しいなって。久しぶりに、いいでしょ?一杯くらい」
「営業二課の朝倉か、システム開発課の田川に聞いて貰えば?」
「朝倉くんは同じ職場になっちゃって、愚痴りにくくて。田川さんとは、もう別れたの。あの人、本命と結婚するんだって」
きっと、秘書課からの異動で色々鬱憤が溜まっているのだろう。同じ職場で、かつ一緒に暮らしている朝倉には、言えないグチの一つや二つあるに違いない。
涼と同じように。
「…一杯だけな。俺、すぐ帰るよ?」
「もちろん。じゃ、九時に、『ブルーローズ』で」
陽菜がお気に入りの懐かしいバーの名前。付き合っていたころ、いつもその店で待ち合わせをしたものだ。
涼が頷いて、去っていく。
その背中を見送る陽菜の口元には、わずかに歪んだ笑みが浮かんでいた…
今日久しぶりに、暑気払いで飲まない?」
「え」
まるで、昔、付き合っていた頃のよう。軽い感じで誘う陽菜に涼は言葉を失う。
「大丈夫、やましい事は何もない。
私、あなたのことはすっかり自分の中でケリをつけたから。そもそも結婚した人には興味ないし。
ただ、ちょっとグチ聞いて欲しいなって。久しぶりに、いいでしょ?一杯くらい」
「営業二課の朝倉か、システム開発課の田川に聞いて貰えば?」
「朝倉くんは同じ職場になっちゃって、愚痴りにくくて。田川さんとは、もう別れたの。あの人、本命と結婚するんだって」
きっと、秘書課からの異動で色々鬱憤が溜まっているのだろう。同じ職場で、かつ一緒に暮らしている朝倉には、言えないグチの一つや二つあるに違いない。
涼と同じように。
「…一杯だけな。俺、すぐ帰るよ?」
「もちろん。じゃ、九時に、『ブルーローズ』で」
陽菜がお気に入りの懐かしいバーの名前。付き合っていたころ、いつもその店で待ち合わせをしたものだ。
涼が頷いて、去っていく。
その背中を見送る陽菜の口元には、わずかに歪んだ笑みが浮かんでいた…