エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「…ハイ?」
電話から聞こえたのは、女性の声。電話番号を間違えたのかとスマホの画面を見るが、涼の名前が表示されている。
「四辻の電話ですよね?」
「そうです。涼は酔って寝てしまいました」
電話越しの女は、『涼』とやけに親しげに呼ぶ。
だが、その声に思い当たる人物はいない。
「失礼ですが、どなた?」
嫌な予感がしたが、初音はあくまで冷静にたずねた。
「私、福岡陽菜と申します。涼がアリオンにいた頃からの付き合いで」
アリオンにいた頃からの知り合い。どうしてそんな女性が深夜に涼の側にいるのだろう。
「奥さま、ですよね?ドイツに留学されている、丹下家の御令嬢」
彼女の言葉には、トゲがあった。イヤミとも聞こえるように、“御令嬢”を強調したからだ。
「涼がお世話になったみたいですね、すみません」
トゲのある言葉には慣れている。彼女の挑発に強気で返した。
「既婚の男性の家に、こんなに遅くまで付き合っていただいて、悪い噂でもたったら大変です。本当にご迷惑をおかけしてすみません。
夜も遅いですから、タクシーを呼んで下さいね。料金はあとで全額支払いますから、領収書もお忘れなく」
電話から聞こえたのは、女性の声。電話番号を間違えたのかとスマホの画面を見るが、涼の名前が表示されている。
「四辻の電話ですよね?」
「そうです。涼は酔って寝てしまいました」
電話越しの女は、『涼』とやけに親しげに呼ぶ。
だが、その声に思い当たる人物はいない。
「失礼ですが、どなた?」
嫌な予感がしたが、初音はあくまで冷静にたずねた。
「私、福岡陽菜と申します。涼がアリオンにいた頃からの付き合いで」
アリオンにいた頃からの知り合い。どうしてそんな女性が深夜に涼の側にいるのだろう。
「奥さま、ですよね?ドイツに留学されている、丹下家の御令嬢」
彼女の言葉には、トゲがあった。イヤミとも聞こえるように、“御令嬢”を強調したからだ。
「涼がお世話になったみたいですね、すみません」
トゲのある言葉には慣れている。彼女の挑発に強気で返した。
「既婚の男性の家に、こんなに遅くまで付き合っていただいて、悪い噂でもたったら大変です。本当にご迷惑をおかけしてすみません。
夜も遅いですから、タクシーを呼んで下さいね。料金はあとで全額支払いますから、領収書もお忘れなく」