エチュード〜さよなら、青い鳥〜
マーシャは、隣室でコーヒーを飲んでいた。
初音だけの音を見つけることは、彼女自身にしか出来ない。そう思って、初音を置き去りにしてきたが、彼女ならきっとやれる。そんな確信があった。
「…?」
しばらくピアノの音が聞こえないと思っていたら、聞こえてきたのは、まるで悲鳴のような音。
リストの超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」だ。
初音らしくない乱れた音。焦りや不安といった、もどかしいほどの負の感情が爆発している。それでいて惹きつけられる激しさだ。
このわずかな間に何があったのかは分からないが、彼女に変化が起きたことは間違いない。