エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーー次も女の声だったら、終わり。
そう自分にいい聞かせてドイツの時間で23時、東京なら朝の7時に初音はもう一度、勇気を出して電話をかけた。
いつもの涼なら起きて朝ごはんを食べている時間だ。
鼓動が痛いくらいに、強く早くなる。電話を持つ手が震えていた。
ーー10コール過ぎたら諦めて切ろう。
そう決めた、そのちょうど10回目で電話が繋がった。
「もしもし…涼?」
電話は繋がっているのに、返事がこない。
もしも、また、あの女の声だったら。
初音は恐怖を抱きながら、もう一度電話に向かって声をかけた。
「涼?」
「…おはよう、初音」
よかった。間違いなく涼の声だ。
声だけで、胸が締め付けられそうだ。
昨日の電話は、何かの間違いだ。
きっと、涼がきちんと説明してくれる。
そう自分に言い聞かせながら、初音は慌てないように、自分を落ち着かせながら言葉をつないだ…