エチュード〜さよなら、青い鳥〜
初音からの電話が鳴る少し前。
涼は、ゆっくりとまぶたを開いた。目に飛び込んできたのは見慣れた壁紙と、目覚まし時計。
ここは、自分の部屋だ。
ーーあれ、どうやって帰ったんだ?
昨夜は久しぶりに陽菜と飲みに行った。
だが、途中から記憶がない。自分の部屋に帰った記憶がない。それほどの量を飲んだつもりはなかったが、蓄積していた疲労のせいか悪酔いしてしまったようだ。
「…ん」
「…?」
人の気配がある。しかも、すぐ近くに。
嫌な予感がした。自分に限ってあり得ないと思いながら、壁に向いていた顔の向きを、恐る恐る変える。
隣で陽菜が眠っていた。
一気に血の気が引く。そっと毛布をめくり、さらに青ざめた。
「陽菜…?なんでここに?
しかも、なんだよ、マジか…?」
そう、陽菜も涼も何も身につけていなかったのだ。
「早いよ、涼。もう少し寝かせて…昨日は久しぶりに疲れた」
「ってことは、したのか…?」
「誘ったのは涼よ。しかも、私のことずっと『初音』って。奥さまの代わりさせられた」
ぷうっとふくれて見せて、陽菜は再び目を閉じた。