エチュード〜さよなら、青い鳥〜
青ざめた涼を見て、陽菜は心が震えるほどの歪んだ喜びを感じていた。
涼は陽菜が昨夜、“丹下社長に異動させられた”と愚痴ったことは、ちゃんと覚えていたようだ。
“自業自得とはいえ、人生を賭けていた仕事を取り上げられるなんて”と言って、涼に縋るように泣いた。涼は、優しく陽菜の涙を拭ってくれた。
彼の優しさは熟知している。あとは理性を失くすくらい強い酒を飲ませてしまえば、こっちのものだった。酔った涼をマンションに運び服を脱がせた。出来れば既成事実も作りたかったが、飲ませ過ぎて、酔い潰れて使い物にならなかったことは誤算だった。
でも、裸で体を寄せ合っていただけでも、真面目な涼には充分効果はあった。
ーー涼の心の隙間に滑り込んで、社長令嬢との結婚を壊してやる。
涼は、陽菜と過ちを犯した自分を許しはしないだろう。それに社長令嬢も強気ではいたけど、涼が不倫をしているかもと、動揺しているはずだ。
「…せめてシャワーくらい、貸して?」
「どうぞ」
ーーさぁ、壊れてしまえ。私を不幸にした報いを受けろ。
陽菜は脱ぎ散らかした自分の服を拾って、寝室を出て行く。その口元は歪んだ笑みが浮かんでいた。
涼は陽菜が昨夜、“丹下社長に異動させられた”と愚痴ったことは、ちゃんと覚えていたようだ。
“自業自得とはいえ、人生を賭けていた仕事を取り上げられるなんて”と言って、涼に縋るように泣いた。涼は、優しく陽菜の涙を拭ってくれた。
彼の優しさは熟知している。あとは理性を失くすくらい強い酒を飲ませてしまえば、こっちのものだった。酔った涼をマンションに運び服を脱がせた。出来れば既成事実も作りたかったが、飲ませ過ぎて、酔い潰れて使い物にならなかったことは誤算だった。
でも、裸で体を寄せ合っていただけでも、真面目な涼には充分効果はあった。
ーー涼の心の隙間に滑り込んで、社長令嬢との結婚を壊してやる。
涼は、陽菜と過ちを犯した自分を許しはしないだろう。それに社長令嬢も強気ではいたけど、涼が不倫をしているかもと、動揺しているはずだ。
「…せめてシャワーくらい、貸して?」
「どうぞ」
ーーさぁ、壊れてしまえ。私を不幸にした報いを受けろ。
陽菜は脱ぎ散らかした自分の服を拾って、寝室を出て行く。その口元は歪んだ笑みが浮かんでいた。