エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「もしもし、涼?」

何ヶ月ぶりだろう。聞こえてきたのは、初音の声だ。

「涼?」

なかなか返事をしない涼に、初音の声が訝しげに訊ねてくる。

「…おはよう、初音」

「おはよう。朝からゴメン、まだ、寝てた?」

「あぁ、急にどうした?」


久しぶりの電話がなぜ、よりにもよって“今”なんだろう。自己嫌悪で最悪の朝だというのに。
“妻”としてのセンサーが異常事態発生だと知らせたとでもいうのだろうか。


「うん、ちょっと悩んでて。
本当は昨夜電話したのよ?そうしたら福岡さんって女性の方が出て、涼は酔って寝てるって。
私、ビックリしちゃって…」


「…マジか」


さすがの涼も絶句する。まさか数ヶ月ぶりの電話がそんなタイミングでかかってきて、陽菜が電話に出たなんて思いもしなかった。

でもそれならば、この電話の意味はわかる。陽菜と一晩を過ごしたのか、確認の電話だ。
涼は、混乱する頭をなんとか整理する。遠くドイツにいる初音に心配かけたくない。

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