エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「それほど飲んだつもりはなかったんだけど。
思っていたより、酔いが回ってしまったみたいなんだ。自分が情けないよ。
そっちは、どう?秋には、マーシャ・アルジェリーナが来日すると聞いた。初音も一緒かい?」

平常心を装いながら、さりげなく話題も変える。

「驚いた、もう知ってるの?そうよ、私も一緒に行く」

「久しぶりに会えるな。楽しみにしてるよ。
すまない、そろそろ出勤の支度をしないと」

「そうね、朝からゴメンなさい」

「久しぶりに声が聞けてよかった。じゃ」

上手く会話をつないでまとめ、さっさと電話を切ろうとした。


「あ、涼!待って!
…いいんだよね?私、あなたのところに帰っていいんだよね?」


やっぱり、誤魔化しきれないか。

涼は、眉をひそめた。
初音は、疑っている。当然だろう。


「当たり前だろ。ゴメンな、初音。不安にさせて、ゴメン。
…許されるなら、君を待ってるから」


涼は素直にそう告げて、初音からの言葉を待った。














< 196 / 324 >

この作品をシェア

pagetop