エチュード〜さよなら、青い鳥〜
『許されるなら』

その一言が、福岡陽菜との間に初音から許しを請うようなことが起きたことを、如実に物語っていた。


初音の心臓は、うるさいほどに跳ねる。頭が真っ白になって、耳鳴りさえする。
突きつけられた現実はどこか遠く、だけれど確実に初音の心を傷つけた。


「やっぱり、遠い。涼が遠い。
顔が見たい。きちんと目を見て話がしたい。電話ごしの声じゃあなたの心までは見えない。
だから許すも何も、どんなにもどかしくても、すぐに涼のもとに飛んでいけない今は、私に責める権利はないから」


「ゴメン。酔っていて記憶がないって、いい歳した大人が言い訳にならないよな。
そもそも、陽菜が仕事のグチを聞いて欲しいって言ってきた時に断るべきだったんだ」


陽菜。
涼は彼女をそう呼ぶのだと知って、スッ、と心が冷えた。



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