エチュード〜さよなら、青い鳥〜
アリオン・エンタープライズへの出向がなければ、涼の妻は彼女だった。彼女ならいつもそばにいて涼を支えて、幸せな日々を送っていたかもしれない。
だが、実際は初音が妻となった。涼を丹下の一員にして囲い込み、初音は『四辻』を名乗って『丹下』の名から逃れた。そのうえ、遠くドイツに留学をしていて、妻としての責務は果たしていない。
涼にとっては、こちらにばかり都合が良いような結婚が、窮屈になっているのかもしれない。そのせいで福岡陽菜が入り込む隙が出来たのなら、彼を責めるわけにはいかない。
「朝の忙しい時間に、ごめんなさい。
声が聞けただけでも、よかった。毎日暑いでしょ?体に気をつけて」
「…初音も」
初音は、震える指でスマホをタップして通話を切った。
だが、実際は初音が妻となった。涼を丹下の一員にして囲い込み、初音は『四辻』を名乗って『丹下』の名から逃れた。そのうえ、遠くドイツに留学をしていて、妻としての責務は果たしていない。
涼にとっては、こちらにばかり都合が良いような結婚が、窮屈になっているのかもしれない。そのせいで福岡陽菜が入り込む隙が出来たのなら、彼を責めるわけにはいかない。
「朝の忙しい時間に、ごめんなさい。
声が聞けただけでも、よかった。毎日暑いでしょ?体に気をつけて」
「…初音も」
初音は、震える指でスマホをタップして通話を切った。