エチュード〜さよなら、青い鳥〜



「すみません、遅くなりました!」

その時、到着ロビーにあふれる人の間を縫うようにして走ってきたのは、涼だった。

「遅かったな」
「すみません。出発前に急な来客でバタバタしてしまいました。
…うぁっ、マーシャ・アルジェリーナ!ほ、本物だ…」


一条に謝りながらも、涼はマーシャを目の前で見て涙を流さんばかりに感動している。


「この男が、ハツネの夫かい?」
「そう」
「久しぶりに会った妻より、私の方がいいなんて、バカだね」
「そうなの。ピアノバカなのよ」


マーシャとドイツ語で軽快に会話する初音に、涼は息を呑む。涼が神様と畏怖する偉大なピアニストと、まるで本物の家族のように馴染んでいることが、驚きだ。
< 202 / 324 >

この作品をシェア

pagetop