エチュード〜さよなら、青い鳥〜
それ以上マンションに着くまで会話もなかった。
せっかく会えたというのに、二人の間に見えない壁があるように思えた。
久しぶりに訪れた涼の部屋。
もしかしたら、福岡陽菜の荷物があったりするのかもと不安が頭をよぎっていた。
だがドアが開いた途端、全てが杞憂だったと知る。
以前より無駄を削ぎ落とした、シンプルな部屋。
アリオンのオーディオ『エンペラー』が唯一の贅沢品で、あとは折り畳み式の小さなローテーブルとベッドがあるだけ。冷蔵庫すら見当たらない。
「本当に、ここで暮らしてる?」
「初音が帰ってくるまでの仮住まいだから。
だから今日は、丹下の家のほうがいいかと思ったんだよ」
女性の影どころか、生活している空気すら薄い部屋だった。初音はとりあえずテーブルの前の床に直接に座る。座布団やクッションすらない。床は硬くてひんやりとしていた。
「コーヒー、飲むだろう?」
「うん」
涼は電気ケトルでお湯を沸かし、ドリップコーヒーを淹れた。部屋にコーヒーの芳香が漂う。小さなテーブルにコーヒーカップを置くと、涼は初音と向かい合わせに座った。
せっかく会えたというのに、二人の間に見えない壁があるように思えた。
久しぶりに訪れた涼の部屋。
もしかしたら、福岡陽菜の荷物があったりするのかもと不安が頭をよぎっていた。
だがドアが開いた途端、全てが杞憂だったと知る。
以前より無駄を削ぎ落とした、シンプルな部屋。
アリオンのオーディオ『エンペラー』が唯一の贅沢品で、あとは折り畳み式の小さなローテーブルとベッドがあるだけ。冷蔵庫すら見当たらない。
「本当に、ここで暮らしてる?」
「初音が帰ってくるまでの仮住まいだから。
だから今日は、丹下の家のほうがいいかと思ったんだよ」
女性の影どころか、生活している空気すら薄い部屋だった。初音はとりあえずテーブルの前の床に直接に座る。座布団やクッションすらない。床は硬くてひんやりとしていた。
「コーヒー、飲むだろう?」
「うん」
涼は電気ケトルでお湯を沸かし、ドリップコーヒーを淹れた。部屋にコーヒーの芳香が漂う。小さなテーブルにコーヒーカップを置くと、涼は初音と向かい合わせに座った。