エチュード〜さよなら、青い鳥〜
初音は、コーヒーから立ちのぼる湯気を見つめる。
何て言って切り出そうか。悩んで結局、ストレートに尋ねた。
「福岡さんとは?」
やっと絞り出した声は、低くかすれていた。
「ああ。不安にさせてごめん。
あの日、前後不覚になるほどに飲んでしまって、陽菜に介抱してもらったらしい。本当に記憶がない。陽菜は、もう一度俺とやり直したかったようなんだ。チャンスだと思ったんだろう。そんな隙を見せた俺が悪い。陽菜ともう一度どうにかなりたいなんて俺自身は全くないよ」
「でも、朝まで一緒だったんでしょ?」
「それは、俺が陽菜の服に吐いてしまって、どうにもならなかったんだって。歩けない、吐く、記憶もない、そんな最悪の状態で良からぬことなどできるはずもない」
「…涼がそんなに酔うなんて信じられないんだけど」
いつになく饒舌で、まさに立板に水と言わんばかりに言葉を紡ぐ涼に、違和感を感じた。そしてその違和感は初音の胸に澱みをつくる。