エチュード〜さよなら、青い鳥〜

思い出に変えて

離婚届を残して、涼は消えた。

リサイタルを終えてマーシャとクラウゼ教授は、一足先にドイツに帰っていった。
初音は、離婚の報告を両親にしたり、心の整理をする為に、ひとりしばらく日本に留まることにした。



「…ドイツ留学を始め、好きにやらせてもらって、奥さんらしいこと何にもしてなかったし。
そもそも、涼をアリオンに引き止める為のような結婚だったから」

「…あいつ、相当思い詰めていたんだな。気づかなかったよ。それにしても、離婚とは」

久しぶりに会った父広宗は、低く唸った。

「ドイツと日本でしばらく離れていたせいか、私、意外に平気。たぶんおじい様の方がショックだと思う。この間のリサイタルも一緒に来てくれたし、孫のお婿さんというより歳の離れた友達みたいだったから」


平気と強がる娘の目は落ちくぼみ、顔はひどく青ざめていた。

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