エチュード〜さよなら、青い鳥〜


初音が帰ってくると、シューベルトの『子守り歌』が聞こえた。


そっと部屋のドアを開けると、マーシャのピアノをBGMに、クラウゼ教授に抱っこされたままスヤスヤと眠る涼音の姿があった。


ーーなんて、贅沢な娘かしら。


初音は、目を細めてその光景を見た。


初音は涼には何も言わず、ドイツで涼音を出産した。

そもそも離婚後、涼がどこにいるのかもわからなかった。本気で探せば見つかるだろうが、日本の両親にも涼を探さないように頼んだ。
彼にとっては終わったことだ。
それに離婚したとはいえ、涼が自分の戸籍を見れば涼音の存在に気づくはずだ。そうなれば、さすがに連絡があるはず。だがそんな連絡は未だにない。


涼音をベッドに寝かせてから、マーシャとクラウゼ教授とともに、初音はそっと別室に移動した。






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