エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「病気だなんて。何の病気なのかしら、大丈夫なのかしら」
クラウゼ教授はマーシャにしがみつく。まるで不安を感じた幼な子が母を求めるように。
どんなに離れていても親子なのだ、と初音は思う。命の終わりが見えた時に、最後に叶えたい夢は家族と最高の音楽を奏でたいなんて。
父と娘。男と女。一度は家族だった三人。離婚してもその縁は決してゼロにはならない。
初音は、涼を思う。涼は知らなくても涼音の父親は彼だ。血のつながりはきっと深い縁となって、いつか巡り会うことになる。
真実を知った時、涼はどうするだろう。
「心配しても仕方ないさ、ハインリヒももう歳だからねぇ。可愛いひとり娘に去り際を見せたいんだろ。ディアナ、その目にしっかりと焼き付けてやりな。アンタの下手くそなピアノも練習すればいくらかでもマシになるだろ」
「マーシャも、たまには母親らしいこと言ってくれるのね。
ピアノが大好きで、努力はしたのよ?だけど、私は手が小さくて。それを克服できなくて、一流のピアニストにはなれなかった。ヘンリーにも才能がないって言われたわ」
「グズグズ言わない。ディアナ、ハツネ、とにかく練習しなさい。私たちの力、ヘンリーに見せつけてやりましょう。
じゃ、私はスズネと一緒にお昼寝するから」
挑戦的なマーシャの笑み。この顔をしたマーシャは、悪魔的なほどに無敵だ。逆らえない。
初音もクラウゼ教授も、黙々とそれぞれピアノに向うしかなかった。
クラウゼ教授はマーシャにしがみつく。まるで不安を感じた幼な子が母を求めるように。
どんなに離れていても親子なのだ、と初音は思う。命の終わりが見えた時に、最後に叶えたい夢は家族と最高の音楽を奏でたいなんて。
父と娘。男と女。一度は家族だった三人。離婚してもその縁は決してゼロにはならない。
初音は、涼を思う。涼は知らなくても涼音の父親は彼だ。血のつながりはきっと深い縁となって、いつか巡り会うことになる。
真実を知った時、涼はどうするだろう。
「心配しても仕方ないさ、ハインリヒももう歳だからねぇ。可愛いひとり娘に去り際を見せたいんだろ。ディアナ、その目にしっかりと焼き付けてやりな。アンタの下手くそなピアノも練習すればいくらかでもマシになるだろ」
「マーシャも、たまには母親らしいこと言ってくれるのね。
ピアノが大好きで、努力はしたのよ?だけど、私は手が小さくて。それを克服できなくて、一流のピアニストにはなれなかった。ヘンリーにも才能がないって言われたわ」
「グズグズ言わない。ディアナ、ハツネ、とにかく練習しなさい。私たちの力、ヘンリーに見せつけてやりましょう。
じゃ、私はスズネと一緒にお昼寝するから」
挑戦的なマーシャの笑み。この顔をしたマーシャは、悪魔的なほどに無敵だ。逆らえない。
初音もクラウゼ教授も、黙々とそれぞれピアノに向うしかなかった。