エチュード〜さよなら、青い鳥〜
演奏会直前。


「涼音ちゃんのことは任せて」


母はそう言ってくれたが心配は尽きない。
だが。時間は無情に迫ってくる。

ジュンがデザインしてくれたドレスに身を包み、初音は、立ち上がった。

「ママ」

不安そうな顔で涼音が初音にしがみつく。

「涼音、聴いててね?ママ、頑張ってくるから」

初音の演奏は今日のプログラムの一番だ。
余計な雑念は捨て、プロコフィエフの世界に没頭したい。最高の音楽を聴いてくれる人全てに届ける為に。

「ママー!」

珍しく泣きぐずる涼音を母に預け、初音は控え室を出た。





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