エチュード〜さよなら、青い鳥〜

その頃舞台裏では、大騒ぎだった。

「マエストロ！マエストロ、しっかりして下さい！救急車呼んで！」

舞台から降りた途端に、ヘンリーが倒れたのだ。
スタッフが懸命に声をかけるが、ヘンリーは真っ青な顔色で意識も朦朧としていた。

「パパ！」

クラウゼ教授が金切り声を上げて駆け寄ろうとする。だが、その腕をマーシャが掴んだ。

「ディアナ、拍手がまだ止んでいない」

「でも、パパが！」

「私たちがすべきことを。行くよ」

マーシャはクラウゼ教授を引きずるように舞台へと向かう。観客の拍手に答え、深々とお辞儀をしてから、再び舞台を降りた。

それから舞台の明かりを落とすように指示をする。オーケストラの面々も舞台を降り、舞台裏は一層ざわついた。