エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ドイツ語と英語と日本語が入り混じり、混乱状態の舞台裏。クラウゼ教授は泣きながらヘンリーに寄り添う。初音も通訳に忙しくてパニック状態だ。



そこへ静かに聴こえてきたのは、ショパンのエチュード10-3、『別れの曲』だった。




騒然としていた舞台裏がスッと静かになる。
マーシャの奏でる美しく切ない調べが、全ての人の心を落ち着かせ、そして、胸を打つ。
これほどまで心の奥にまで響き、感情を揺さぶる演奏は、マーシャにしかできないだろう。

初音は、自然と涙が溢れてくるのが止められなかった。

そして10-3が美しい余韻を残しながら、終わる。

そのままエチュード10-4と続くと、感傷的になっていた会場の空気が一瞬で変わる。
10-4の持つ情熱的で、湧き上がる衝動に駆られるような激しさと強さにのまれていく。


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