エチュード〜さよなら、青い鳥〜


「ブラボー!ハツネ!」
一番最初に大きな声をあげ、拍手してくれたのはヘンリーだった。
それに続いて大きな拍手が湧き上がる。


初音はピアノから立ち上がり、深々とお辞儀をして顔を上げると、聴いてくれた人達の笑顔が見えた。


ここに集った人達は、恐らく初音が誰かは知らない。アリオンの令嬢『丹下』初音だとか、ピアノの神さまと呼ばれるマーシャ・アルジェリーナの愛弟子だとか、ヨーロッパのピアノコンクールでいくつも賞を取っているだとか、何も知らない。

たまたま、チャリティーコンサートがあるから聴いてみようと来てくれただけ。それが、皆、手が痛くなるんじゃないかと心配になるくらい拍手をしてくれた。

嬉しかった。ただピアノを弾くことが好きでここまでやってきた。聴いてくれた人達に喜んでもらえることは、何より嬉しい。



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