エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「初音!ありがとう!まさか、アニメの曲や昭和の歌謡曲、映画音楽まで弾いてくれるとは思わなかった。皆、すごく喜んでいるよ」


廊下で、この病院の理事長を務める一条拓人が満面の笑みで待っていた。
初音は拓人に駆け寄って握手をかわす。


「こちらこそ貴重な機会をありがとう、おじ様。私も楽しかった」

「先日のヘンリー・クラウスとの共演も素晴らしかった。あれを聴いて、こんな小さなチャリティーコンサートの依頼をしたことが申し訳なくて。初音、成長したな」

「おじ様に褒めてもらえるなんて、嬉しい!コンサートの大小は関係ないよ。聴いてくれる人がいて、喜んでくれればそれでいいの」




「すみません!アンコールの声が止みません。何かもう一曲、お願い出来ませんか?」

そこへ、スタッフの一人が慌てふためいて声をかけた。

「アンコール?嬉しい!すぐに行きます」

「ありがとう、初音。
俺はアンコールを聴いたらすぐに仕事に戻らなくてはならないんだ。今度、改めてお礼をするよ」

「うん、楽しみにしてるね。じゃ、行ってくるわね、おじ様」


拓人と最後に握手を交わし、初音は会場へと戻って行った。


< 275 / 324 >

この作品をシェア

pagetop