エチュード〜さよなら、青い鳥〜
マーシャほど、豊かな感情表現は出来ない。それは、どんなに頑張っても追いつけない人生の経験値の差だ。

でも、初音には初音の、今しか出来ない演奏がある。

繊細な、どこまでも澄んだ、美しい音色。
初音は、この曲が持つ哀しみや切なさだけではなく、この曲に出会い、今、この場で弾ける喜びを届けたいと思った。






弾き終えると、どこからともなく鼻を啜る音がする。嗚咽さえ聞こえてきた。


だが、そんな余韻も次の瞬間に吹き飛ぶ。


マーシャの教えに従って、そのままエチュード10-4と続く。過日のコンサートと同じように、感傷的になっていた会場の空気が一瞬で変わる。

10-4の持つ情熱的で、湧き上がる衝動に駆られるような激しさと強さにのまれていく。


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