エチュード〜さよなら、青い鳥〜
別れた時よりひどくやつれている。祖父から涼が会社を興したこと、その会社が上手くいっていないことも聞いていた。

だいぶ苦労しているのだろう。涼音の存在がそこへ追い討ちをかけやしないだろうか。更に気苦労を増やしてしまうのじゃないか。


初音は、やはりこのまま彼が気付くまで知らせない方がいいと、思った。


「わざわざありがとう、じゃあ、さよなら」


そう言って、彼に背を向けた、その時だった。


「ハツネ!良い音だったじゃないか!」

控え室をノックもせずに開けたのは、マーシャだった。


「マーシャ、せめてノックくらいしないと」

その後ろをクラウゼ教授が困り顔で付いてきた。



クラウゼ教授の腕の中には、涼音がいる。


< 288 / 324 >

この作品をシェア

pagetop