エチュード〜さよなら、青い鳥〜
真っ先に異変に気づいたのは、マーシャだった。
ドアの前で棒立ちの男。スタッフジャンパーを着ていたから気にも止めていなかったが、涼音を凝視しているその顔に、どこか見覚えがある。
日本人の顔の区別は苦手だ。同じ顔に見える。だが、男の持つ真面目そうな雰囲気が、ハインリヒに似てると前にも思ったことを思い出した。
「Herr…」
マーシャの声に反応したのは、初音だ。Herrとは英語でいう“ミスター”に相当するドイツ語。つまり、マーシャは涼に声をかけようとしている。慌てて止めようと声を上げた。
「マーシャ!」
「Herr Yotsuji?…〜…〜?」
ヨツジ、という発音だけは聞き取れたのだろう。涼がマーシャを見た。マーシャがドイツ語で話しかけてきたが、涼にはわからない。
「お疲れ様って。もう、行って下さい」
初音は適当に誤魔化して涼を追い出そうとした。
『ミスター四辻?ハツネの夫だった人かい?』
実際にはマーシャはそう言っていたのだが。
ドアの前で棒立ちの男。スタッフジャンパーを着ていたから気にも止めていなかったが、涼音を凝視しているその顔に、どこか見覚えがある。
日本人の顔の区別は苦手だ。同じ顔に見える。だが、男の持つ真面目そうな雰囲気が、ハインリヒに似てると前にも思ったことを思い出した。
「Herr…」
マーシャの声に反応したのは、初音だ。Herrとは英語でいう“ミスター”に相当するドイツ語。つまり、マーシャは涼に声をかけようとしている。慌てて止めようと声を上げた。
「マーシャ!」
「Herr Yotsuji?…〜…〜?」
ヨツジ、という発音だけは聞き取れたのだろう。涼がマーシャを見た。マーシャがドイツ語で話しかけてきたが、涼にはわからない。
「お疲れ様って。もう、行って下さい」
初音は適当に誤魔化して涼を追い出そうとした。
『ミスター四辻?ハツネの夫だった人かい?』
実際にはマーシャはそう言っていたのだが。