エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「I'm sorry, I don't understand German.」
(すみません、私はドイツ語はわかりません)


流暢な英語で答えた涼。すると、英語なら会話が出来ると分かったマーシャは、涼の肩を掴んで英語で話しかけた。


「あのショパンのエチュードを聴いただろ?ハツネは、アンタが望んだようにピアニストとして着実に力をつけているよ。
アンタは夢を叶えたのかい?成功したようには見えないね。バカな男だよ。何もかも捨てなくても夢を追うことは出来ただろうに。
…自分が手放したものの大切さを噛み締めな」


噛み付くようなマーシャの勢いに、涼は息を呑む。驚きで何も言えない。相手はピアノの神さまとして崇拝しているマーシャ・アルジェリーナ。
その神さまが怒りを隠さずに涼を責め立て、乱暴に掴んだ肩を突き飛ばした。

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