エチュード〜さよなら、青い鳥〜
涼は、わずかによろけた。


『手放したものの大切さ』というマーシャの言葉が胸に刺さる。

ーーそんなこと、言われなくてもわかっている。

離婚してこの二年間、初音を忘れたことなど一度もなかった。別れたことに後悔はしていない。最高のピアニストになる為に、涼が出来る最大の応援は、彼女を自由にすることだと信じて疑わなかった。


だが。
先ほどから頭に浮かんでは打ち消している、目の前の幼な子の存在。


ーーまさか?いや、そんなはずは…絶対無いとは言い切れないか?


「初音…その子…」


涼がそう尋ねた時にはもう、初音の腹は決まっていた。


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