エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「可愛いな」

慣れない抱っこで腕が痛い。

それでも涼音の重さと温もりを感じながら、何より愛らしい表情をいつまでも見ていたい、などと思っている自分に驚く。
今まで抱いたこともない感情だ。


「大きな目が初音に似てるな」
「そう?そうやって笑った顔は涼にそっくりよ」

そっくりと言われて、悪い気はしない。こんな気持ちも初めてだ。


ーーそうか、キミは、俺の子供なんだ。


涼は、涼音を自分の子供だと認めた。言葉で理解したわけじゃない。湧き上がる衝動的な感情の正体が、子供への愛情なのだと気づいた。この子は守るべき自分の子供なのだと、男としての本能が訴えていた。


「離婚前夜、初音の気持ちが離れてしまうのが怖くて無茶苦茶に初音を抱いた。そうか…あの夜の…まさかこの世に自分の子供が居るなんて、思いもしなかった。俺はなんてバカだったんだろう。
こんなに愛おしい存在があるなんて…」


涼が笑顔を向けると、涼音も笑顔を返してくれた。その笑顔に胸がふんわりと暖かくなる。
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