エチュード〜さよなら、青い鳥〜
その頃、初音は音楽大学に通う学生で、卒業後の進路に悩む日々を過ごしていた。
初音にとって、ピアノのない人生は空っぽだ。
でもピアノを弾くだけで暮らしていけるほど、人生甘くないことも、わかっている。
高校生までは、自分はピアノが上手いと思っていた。いくつかのコンクールで実績もあった。
だが。
そんな自信は次第に揺らぎ、最後に出場したコンクールで粉々に崩れた。
いくら練習しても、認めてもらえない。
だから、戦うことをやめた。
戦うより、大好きなピアノに関わっていられる日々を楽しむことにした。
多くの演奏を聴いた。
人によって同じ曲でも解釈が違う。技術の素晴らしさを目の当たりにして、卑屈になるのではなく素直に楽しめば、一層ピアノが好きになった。
ピアノに関われる日々に幸せを感じた。
出来ればこの幸せを多くの人と共有出来たら、もっと幸せだと思う。だが、その為にはどうしたらいいのかわからない。悩む日々だ。
そんな大学生活もあと1年を切っていた。