エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「初音、落ち着きなさい。
四辻くん、この子の地雷を踏んじゃったねー。
君、初音のピアノを聴いたことあるの?」
広宗は、顔を歪ませる初音から四辻へと視線を移した。
興奮する初音とは対照的に、四辻は表情固く、冷静そのもので自分の上司の問いに答える。
「はい。馴染みのミュージックバーで一度だけ、ショパンの『革命のエチュード』を。まさか、あの演奏をしたのが丹下初音さんだったとは」
思い出すだけでも感動がよみがえり、ほんの少し四辻の表情がゆるんだのを、広宗は見逃さなかった。
「へぇ…初音が人前で自分から弾くなんて珍しいこともあるもんだ。それで?四辻くんの感想は?」
「…私は、ショパン弾きと言われるようなプロの演奏を何度も聴いています。ヨーロッパにも足を運んで、生の演奏も聴きました。
そんなただのピアノ好きな素人ですが、耳には自信があります。
はっきり言わせて頂けば、彼女の演奏は、名だたるプロに決して引けを取らない。最初の和音から一気に彼女の世界に引き込まれました。最高のショパンでした」
四辻の賛辞に、歪んでいた初音の表情が少し緩む。
あの夜のことが、思い出された。
初音のことを誰かも知らずに、ただ演奏を褒めてくれたことがとても嬉しかったことを。
四辻くん、この子の地雷を踏んじゃったねー。
君、初音のピアノを聴いたことあるの?」
広宗は、顔を歪ませる初音から四辻へと視線を移した。
興奮する初音とは対照的に、四辻は表情固く、冷静そのもので自分の上司の問いに答える。
「はい。馴染みのミュージックバーで一度だけ、ショパンの『革命のエチュード』を。まさか、あの演奏をしたのが丹下初音さんだったとは」
思い出すだけでも感動がよみがえり、ほんの少し四辻の表情がゆるんだのを、広宗は見逃さなかった。
「へぇ…初音が人前で自分から弾くなんて珍しいこともあるもんだ。それで?四辻くんの感想は?」
「…私は、ショパン弾きと言われるようなプロの演奏を何度も聴いています。ヨーロッパにも足を運んで、生の演奏も聴きました。
そんなただのピアノ好きな素人ですが、耳には自信があります。
はっきり言わせて頂けば、彼女の演奏は、名だたるプロに決して引けを取らない。最初の和音から一気に彼女の世界に引き込まれました。最高のショパンでした」
四辻の賛辞に、歪んでいた初音の表情が少し緩む。
あの夜のことが、思い出された。
初音のことを誰かも知らずに、ただ演奏を褒めてくれたことがとても嬉しかったことを。