エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーー言うと思った。
真面目な涼は、涼音が自分の子供だとわかれば責任感や使命感から一緒にいると言うと思っていた。まさに、初音が思っていた通りだ。
ーーこれじゃ、仕事への使命感から結婚を決めた時と一緒。今度は父親としての使命感から、再び夢をあきらめようとしている。
涼は真面目な性格で、優しいがゆえに押しに弱い。自分の夢や理想を諦めて、人生を左右する大切なことを、場当たり的に決めてしまえば、きっと後から後悔する。後から、あきらめきれない夢や理想がとても価値を持って、「こんなはずでは」と現状を嘆くことになる。
結局、また、絶望を繰り返すことになる。
初音は、やや呆れたように肩をすくめた。
初音の中では、涼とのことは終わった過去だ。
復縁を望んでいるわけじゃない。ただ、涼音の存在を知っていてもらえれば、それだけでよかった。
もう、彼のことで悩むことは終わりにしたい。
「私は、ただ知っていて欲しかっただけ。この世に涼と私の子供がいて、法律上では既に父親になっていることを。
それだけでいいのよ。涼音は、私が育てるから。涼は、自分の夢を叶えて」